ランナーの膝痛とフォーム改善|股関節の使い方・筋力バランス・故障予防の実践ガイド
- パーソナルトレーナー澤田和崇
- 2018年9月10日
- 読了時間: 5分
更新日:9月25日
更新:2025年9月
※本記事は、過去に公開したランニングフォーム・膝痛対策の記事を統合・再編集した内容です。最新の知見と現場事例を反映し、見直しやすい構成に整えました。
要約
ランナーの膝痛は、“膝そのもの”よりも股関節の使い方(可動/主動)と筋力バランスの乱れが主要因になりがち。
股関節主導のフォームに修正し、大腿四頭筋・臀筋・ハムストリングを適切に働かせると、膝への局所負担が下がりやすい。
週2回・各10〜15分のミニドリル+動的ストレッチでも改善の糸口が作れる。
【1】膝痛の主因と“崩れ”のパターン
股関節が主動になっていない
股関節伸展(後方への押し出し)が小さい → 上下動が増える/推進力が弱い/足首・膝に負担集中
原因:①周辺の柔軟性不足 ②膝主導のイメージが強い
痛み部位別のよくある要因
膝蓋骨周囲(前面):大腿四頭筋の柔軟性・筋力不足、上体後傾、つま先着地過多、過負荷
内側・外側:接地の不安定(足部アーチ低下)、軸のブレ、骨盤アライメント不良、距離や質の急増
不安定な着地
足裏のアーチ不足 → 指が使えず、接地が不安定に。
軸のブレ → 上半身・骨盤の揺れが着地衝撃を増加。
脚長差(脚の長さの違い) → 骨盤の歪みによって左右差が発生。
足首の柔軟性不足 → 滑らかな体重移動ができず負担集中。
外側痛(腸脛靭帯炎 など):フォームの乱れ+臀筋の機能低下+オーバーユースの三重奏
🔍 セルフチェックポイント:
走行中の姿勢・着地のバランス
脚の並び方・左右差
お尻まわりの筋力や柔軟性
走行距離や頻度の急増
膝の外側の痛みは放置すると慢性化しやすく、運動習慣にも悪影響を及ぼします。早めの対応と身体全体の見直しが、快適なランニング継続に不可欠です。
【2】90秒セルフチェック
壁立ち:後頭部/背中/お尻/かかと接地。腰の隙間=手のひら1枚が目安。
片脚ヒンジ:骨盤が横へ流れないか。鏡で膝が内側に入らないか確認。
足部アーチ:片脚立ちで母趾球・小趾球・かかと(足裏3点)に均等荷重できるか。
→ 2つ以上で詰まる場合、股関節主導の再学習+足部の安定化から始めましょう。
【3】正しいフォームのコア|骨盤と足の連動
骨盤:軽い前傾で推進方向へ
股関節:後方への伸展(押し出し)を意識
足:足裏3点で静かな接地(頭部の上下動は最小)
上肢:肘後方への振りで骨盤の回旋と同調
目標は「静かな接地・大きな前進」。音が小さく、視線と頭が安定していれば良い方向です。
【4】改善方法|動的ストレッチとケアが重要
股関節と膝の柔軟性を高め、正しいフォームを習得
次のようなアプローチが効果的です:
股関節まわりの動的ストレッチ(前後への脚振りなど)
体幹と骨盤を安定させるトレーニング
着地の意識トレーニング(足裏3点での接地感覚)
疲労度に応じたテーピングや休養
動的ストレッチ
【5】改善ドリル(週2回・各10〜15分/RPE3–5)
A|股関節主導の再学習
股関節外旋ストレッチ 30–45秒×左右
ヒップヒンジ・ドリル 8–10回×2(背中フラット・お尻を後ろへ)
ラテラルスクワット 6–8回×2(膝はつま先方向・体幹中立)
B|肩甲帯&体幹の同調
胸椎回旋ストレッチ 30秒×左右
ウォール・スライド 8–10回×2(肘・手を壁から離さない範囲)
カーフレイズ 12–15回×2(母趾球意識で足部アーチ活性)
RPE(主観的運動強度):会話が可能(4–5)を基本。暑熱・疲労時は1段階下げるのが継続のコツ。
【6】膝を守る3筋バランス
大腿四頭筋:柔軟性低下→膝蓋骨周囲に負担増。前ももストレッチで張り感軽減。
臀筋群:股関節伸展の主役。中臀筋の機能低下は骨盤ブレ→外側痛を誘発。
ハムストリング:内旋位/外旋位でもストレッチし、線維方向の差を埋める。
処方メモ:四頭筋ストレッチ30秒→ハム外旋30秒→ハム内旋30秒→中臀筋アクティベーション(サイドステップ等)で「伸ばす→使う」流れを作る。

【7】ランナーFAQ
Q. 痛くなってからでも改善できますか?
A. 多くはフォーム修正+可動性回復+段階的負荷で軽減。痛み・腫れ・しびれ時は中断・受診を優先。
Q. 週1でも意味はありますか?
A. あります。RPE管理で“やり過ぎない”ことが回復・定着を早めます。
Q. シューズやテーピングは?
A. 足部アーチを補助する選択は有効。テーピングは痛み軽減と意識付けに用い、根本はフォームで解決します。
指導者プロフィール
澤田 和崇 NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(CSCS)。企業・自治体・学校、一般〜アスリートまでのべ3万回の運動指導。理念は「安全・効果・継続」。自治体健康教室・講演・少人数制レッスンの現場知をベースに、ランナーのフォーム改善と再発予防を支援。
関連リンク
【8】まとめ
膝の不調や足首の負担は、股関節を上手く使えないことから始まっているケースが多いです。適切なフォームと身体づくりで、「楽しく長く走る」そんなランニングライフを手に入れましょう。
そして大腿四頭筋・臀筋・ハムストリングの柔軟性や筋力を向上させて、膝を護る身体作りをしていきましょう。
【関連資格】
ウォーキングトレーナー資格取得による高齢者サポートの強化
私はMFA認定ウォーキングトレーナー資格を取得し、高齢者や身体機能が低下し始めた方へのサポート力をさらに高めました。歩行姿勢や足の着き方、筋力バランスの調整など、安全かつ効果的に「快適に歩く」ための専門的な指導が可能となり、多くのお客様から「歩くのがつらくなくなった」「つまずきにくくなった」といった嬉しい声もいただいています。日々の学びや現場での気づきを指導に活かしながら、これからも高齢者の膝や足の健康を守り、安心して運動を続けられるサポートを追求していきます。

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